Pleasure Assortment

趣味や好みの詰め合わせ。完全自己満足ブログなので多分にネタバレを含みます。

【小説】黄金の烏 / 阿部智里

八咫烏シリーズ3作目。
とうとう八咫烏の世界と人間の世界が繋がってきました・・・!
 
真の金烏の実態も少し明かされ、また下級階級の八咫烏の生活にも焦点を当てることで世界観に厚みが出た気がします。
 
 
【やっぱり女の人が怖い】
阿部先生は、女の人が嫌いなのか??って思うくらい、今作も女の怖さ、狡さが描かれていました。
初音は言わずもがな、小梅も怪しさ満点でしたしね。
 
序章の痛ましい女の子の話、、、まさか小梅のことではなかろうと思っていたけれど
初音さんかー。そうかー。。
 
父親に売られ、売春を強要されてきた初音。
愛情に飢えるのも当然な哀しい境遇です。
しかも、やっと自分を愛してくれる伴侶に巡りあえたのに、娘が生まれたとたん夫からの愛を得られなくなって、自分は娘を愛せなくなる。
 
・・・つらい!
 
程度の差はあれ、現代の子育て事情にも通じるものがありますね。
自分そっくりな娘に、幸せになれたかもしれない自分を重ねてしまうというのは、聞いたことある。
 
過去と折り合いがついていないと、いつまでもとらわれ続けてしまうけれど
自分ひとりで乗り越えるのは難しいと思う。
そして心が歪んだままだから、初音は仲間を売ることに罪悪感なんてなかったんでしょう。
いや、復讐だったのかも。
自分を苦境に陥れた八咫烏達への。そして助けてくれなかった八咫烏達への。
 
かつての夫を身代わりにするのも胸糞ですし、猿に加担したことは許されることではない。
それでも、始めは真面目に働く優しいいい子だった初音が、こんな風に変わってしまったというのは哀しいことです。
 
 
 
【ボーイミーツガール!】
小梅のうさんくささは雪哉に好意を抱いていたから、との梓の言葉。
うーん、なるほど。
小梅も雪哉も、大人びて見えるけど15歳とかそのへんでしょ?(私達の15歳とは感覚が違うかもだけど)
男の子は恋愛に鈍いし、恋する女の子の様子に「何か変・・・」と違和感を抱くのも仕方ないのかも。
というか、私も自分の過去の振る舞いが思い出されて恥ずかしく・・・
 
まぁ小梅も隠していたことがあるし、雪哉は宮仕えの際に女の嫌な部分を見てきたから、そう思うのも仕方が無いのか。
反省した雪哉と小梅の今後に期待!(主にラブコメ要因として)
 
 
【登場人物の印象がまた変わった】
今作では、それぞれの内面も掘り下げられて、より人間味を感じられました。
 
例えば長束。
人格者だと思っていたけれど、普通に箱入りお坊ちゃんでした 笑
地下街との会談では相手の本質を見誤るし、貧しいものの暮らし、お金がないということを想像できなかったりだし。
かと思えば、雪哉を人質に差し出そうとしたり、小梅を晒す選択肢を提示したり、利用できるものはなんでも使う、という開き直りも見られる。
 
最初は母親の傀儡かと思ったけど、いい味を出してきた。
一貫して若宮のために動こうとするあたり、ブラコンっぽくていいですね 笑
 
 
路近も、朔王となにやら関わりがありそうだし、裏社会に通じる者なのだろうか??
意外と重要なポジションにいる??
 
 
そして雪哉。
ラストの、若宮へ忠誠を誓うシーン!
泰麒が驍宗を王に選んだ場面を髣髴とさせ、テンションあがります。
 
一度若宮の元を去ったのは、中央の権力争いを疎ましく思い、故郷を守ることことが自分の使命としたからですが、
金烏の実態に触れ、若宮を守ることこそが故郷を、家族を守ることになると知る。
そして、自ら山内衆となる道を志す。
 
なんというカタルシス
前作で道を違えたかのように見せて、ここで回収するとは。
やっぱり自分で決めた道でないと、全うできないしね。
 
 
浜木綿も梓も、それぞれ存在感があっていいですね。
梓の年の功を理由に雪哉を黙らせるのは、お母さん!って感じでしたw
 
 
 
 
これまでは山内の中だけでの争いだったのが、大猿という外からの敵が登場。
且つ、人間の存在が明らかになり、ますます話が広がってきました。
そうかー、そうくるかー!
 
若宮が外界で遊学していた時の様子も知りたいなー。
烏姿で過ごしていたのか、人形で人間に混ざっていたのか・・いや、天狗と一緒にいたのかな。
 
 
次回、空棺の烏!
これは学園モノの予感・・・!