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趣味や好みの詰め合わせ。完全自己満足ブログなので多分にネタバレを含みます。

【小説】烏に単は似合わない / 阿部 智里

本屋さんで見かけて気になっていた、八咫烏シリーズ一作目。
十二国記と似てるのかなーと思いきや(失礼)、違った趣が。
 
いや、これは面白いです!続刊すべて読まなければ。
大奥もの少女小説かと思わせておいて、ラストに怒涛の謎解きパート。
問題解決したわけでも悪者が成敗されるでもなく、なんとももやっとした読後感ですが
いやいや、現実ってこういうものかもしれない、なんて妙に納得させられたり。
続刊にてすっきりするかもしれないな、という期待もあります。とにかく続きが気になる!
 
二十歳でこんな話、世界観を創り出せるというのは、本当に凄い。
漫画の「響」の主人公:鮎喰響 が現実にいたらこんな感じかしら。
姫の名前に真赭の薄を用いるって、どんだけの読書量なのだろう。
 
今現在、二作目の「烏は主を選ばない」を読んでいる途中ですが、ひとまず単の方の感想と考察を。。
 
 
【風景描写が美しい】
四季折々の宮中の描写がなんとも美しく楽しい。
綺麗な景色の内側で、桜花宮ではどろどろした女の争い・お家の権力争いが繰り広げられているんですよねぇ。
 
一番好きなのは、白珠が一巳の庭に連れて行ってもらった時の夜明けの瞬間。
白い花弁にのった朝露が朝日を受けてきらきらと輝く様に見入る白珠と、優しく白珠をみつめる一巳。
二人の恋の切なさと相まって、胸を打ちます。
このシーン、ぜひ映像化されたものを見たい・・・!
 
夏の釣殿、冬の月もいいですね。
各姫の装いも、それぞれ個性があって綺麗で可愛くて良き・・・
浜木綿の蝉の羽の重ねなんてかっこいいだろうな。
私に画力があれば描くのだが。。
 
 
【あせび、怖い】
読み終わった直後の感想はこれでした。
めっちゃ怖い。本物のサイコパスってこんな風なのかも?
悪意を自覚せず自らの手は染めず、人を陥れそれでもなお自分に罪はないと信じて疑わない。
 
姉である双葉のことを「お可哀想に」って・・・いやいやいやいや、そう仕向けたのはあんたやろが!
春の章ラストで、自分が浮雲を弾けるから、双葉でなくて自分がここにいるのだ、とかいうシーン。幻想的な桜の風景と相まって運命的な雰囲気でまとまっているかに見えたのに、本当どの口が言うか!と。
あせびの人格が明らかになった今となっては、狂気のシーンになってしまいました。。
 
うーん、自分の行いがまるっと記憶から抜け落ちているようにみえる。
無自覚、無意識の悪意。
嘉助の利用の仕方、藤波やうこぎを自分の意に沿うよう巧みに誘導する手口。
真赭の薄を襲わせようとしておいてしれっと涙を流す姿に、底知れぬ恐怖を覚えます。
 
父親の東家当主はあせびのこの無自覚の悪意をどのくらい知っているのでしょうか。(知ってて登殿させたなら、ただの親バカにみせかけた相当の策略家では)
そして謎なのは、あせびは登殿したかったってことなのかどうかなんですよね。
登殿前は、幼いころに見えた例の少年が若宮とは知らなかったはず。
それでも双葉を暴漢に襲わせて、自分が登殿するように仕向けたのはなぜなのか。。
もしくは、登殿とは別の目的で双葉を襲わせた?
続刊でこの辺りが明らかになるといいなぁ。
 
とりあえず、あせびの本質を踏まえて頭から再読したくなりますね。
 
 
他にも、白珠が妊娠しているとかいうくだりで思わず笑ってしまったり(若宮のハッタリとそれを信じるピュアな白珠・・・w)、ラストの若宮ったら浜木綿大好きなのねって描写にほわぁー///っとのた打ち回ったりw
不仲だった浜木綿と真赭の薄が共に歩むことになる未来も胸熱です。
 
 
四家の各姫君に関してはまた別途書きたいなと思います。
 
なんにせよ、とにかく続きを早く読みたい!
しばらくは寝不足になる予感です。