Pleasure Assortment

趣味や好みの詰め合わせ。完全自己満足ブログなので多分にネタバレを含みます。

【小説】烏は主を選ばない / 阿部 智里

八咫烏シリーズの二作目です。
 
前作の豪華絢爛大奥バトルとは打って変わって、お家騒動の中心人物、若宮サイドの物語。
暗殺やら密約やら、アクションが多くてはらはらしつつ、クスッとくる場面も多くて、、、こちらも面白くてあっという間に読んでしまいました。
 
 
【交差する物語】
前作:単の方と同じ時間軸の物語なので、ところどころリンクしています。
単ではただのドジっ子に見えた雪哉、実は苦労していたのね・・・とか、若宮が桜花宮をいっこうに訪れない理由とか、七夕の儀式に来なかったのは南家の思惑っていうより若宮の策略だったのね、とかとかとか。
 
多視点の交差する物語、大好きです。(ラブアクチュアリーみたいなやつ)
 
 
 
【登場人物が魅力的】
若宮は切れ者で、でも飄々として、いろいろヒドイ(褒めてる)し魅力たっぷりで。
雪哉との掛け合いはコントかギャグマンがでも見ているかのようで笑ってしまう!
特に若宮が谷間に雪哉を迎えにいった時なんか最高・・・ww
 
くるくるよく動き、事態を飲み込めないままに可哀想な目に合う雪哉。
悪びれもせずにこき使いつつも、雪哉を大切に思っていることが伝わってくる若宮。
そして頼もしくかっこいい澄尾。
もう、みんな好き。
 
本当は頭がいいのに馬鹿なふりをして、周囲や展開をうまーく動かすキャラとか、好きなんですよ。
そういう意味では、長束も似てますね。
弟を守り生かすために、真意を隠して若宮に敵対するものを集めておく。
長束の真意が見えなくて不気味でしたが、真の金烏が現れた際の身の振り方について教育を受けており、「宗家の者」であることに揺らぎがない。
真の為政者としての器を感じさせます。
 
路近もなー、最初は汚いおっさんかと思ったけど(失礼)
なにやら豪快で気風のいい男みたいだし。長束への忠義も厚く馬鹿でもない。
路近が長束に従うようになった経緯も知りたいですね。ここまでの忠義を持つに至ったストーリー、読みたい。
 
 
【若宮と雪哉の未来】
てっきり金烏になった若宮に雪哉が側近として仕え(こき使われ)るんだと思っていたら。。
雪哉、帰っちゃうのね!あっさり予想を裏切られるw
まぁ続刊のあらずじ読んだら再び若宮と行動を共にしているようだけれど。
 
雪哉は最初から家族が大切で、垂氷のために働き役立つことが夢であると言っていたしなぁ。
自分を側近にほしければ譲位しろ と若宮に迫ったのは、若宮に死んでほしくないっていう思いはもちろん、家族の元を離れて別の道を歩むことへの理由付けの意味もあったのかなー、なんて。
 
見ようによっては「私のことが好きならそんな仕事やめてよ!」っていう女の子みたいな・・・雪哉さん、なんというヒロイン。。
 
 
【忠誠、献身とは】
どなたかの感想・考察に、これは忠誠についての物語でもある とありました。
確かに、何を拠り所とするか、そして拠り所とするものとどう向き合い、どう行動するか、という物語でもあるかと思う。
 
分かりやすいのは、雪哉、敦房、路近あたりでしょうか。
 
雪哉は垂氷と家族へ。
敦房、路近は長束へ。
 
長束だって、若宮へ、ひいては山内への慈愛と献身が見て取れる。
若宮は・・・自分自身 ですかね。
 
各々に大切で守りたいもの、身を捧げると決めたものがあり、その拠り所のためにと行動していく。
でも、その思いや行動が、拠り所とするものの意思や望みと合致するとは限らないんですよね。
 
敦房はその最たる例でしょう。
長束のため と言いながら、実際は長束の意思はガン無視して若宮を殺そうとした敦房。
敦房の行動は独りよがりなものであると指摘されても、それがどうした、という態度。
 
長束がどう思っていようが関係ないんですよね。
自分がそうしたいから、長束に金烏になってほしいから。
それが正しいと信じているし、長束のためになると思っている。
 
これを忠義と呼んでいいのかは謎です。
しかも、どうやら敦房はどこか壊れているわけではなく正気のようですし。
まぁ実際は、いとこの撫子を長束に嫁がせて更に権力を得ようとしていたようで、自分の欲望を忠義という名で隠していただけなのかも。
 
一方の路近はといえば、長束への忠誠心は半端ではない様子。
使い捨てられても構わない、とか言ってますし。
本当に長束を崇拝?していて、長束を選んだ自分自身を信じている と感じさせる。
(勝手に期待しておいて「裏切られた!」とか「そんな人だと思わなかった!」とかいう人もいるからね)
 
 
 
 
なんにせよ、まだまだ続きが気になる八咫烏シリーズ!
姫たちのその後も読みたいですし。
 
雪哉が北家当主の孫である、という事実と、あくまで「垂氷の雪哉」であろうとする心については私自身感じ入るところがあるので、気持ちの整理をつける目的かねて今度書き出してみたいな。